親孝行のあるべき姿
ここで気をつけてもらいたいのは、誰が日本に帰るのか、というところです。親がピンピンしていてみんなと会うのを楽しみにしている場合は家族連れで帰るのはいいことです。しかし、親が弱ってきて、大勢で来られると気を遣う、疲れる、という場合は、ひとりで帰国するのも賢明です。というのは、いくら親孝行したくて帰っても、アメリカ育ちの子供も連れて行くと「子供に日本文化を見せてやりたい」ということが優先になり、自分の親といい時間を過ごすというのは二の次になってしまうことが多いからです。同じく、アメリカ人の配偶者を連れて帰っても、ある程度はその人を日本で楽しませなければという思いがあるので同じことになります。年老いた親のために親孝行で帰国するなら、親が主人公であるべきです。
最後に、親孝行は「親が望んだ通りのことを子供がすること」と考えている人が多いので、少しそれを考えてみましょう。もし、そうだとすると、海外生活に親が反対したか、良く思っていなかった場合、もうすでに親不孝をしてしまったことになり、「今さら、親孝行しても……」と思う人もいるでしょう。そうではなく、親孝行は「自分が、親にやってあげたいことをしてあげること」と考えてはどうでしょうか。親が望んだ通りのことができる子供はいないし、もし、できたとしても、本当に親がそれで100㌫幸福かは疑問です。「子供が一緒に温泉に行こうと連れて行ってくれた」「こんなにじっくり話し合ったのは初めてだね」「ナイアガラが見たいという夢を叶えてくれた」というサプライズだって、素晴らしい親孝行なのです。
著者: 角谷紀誉子