親孝行の秘訣~海外在住者版~

受身ではなく能動に対処

「何かあったら」という受身的(リアクティブ)な対処でなく、日本の親との関係は「何かが起こる前に」つまり能動的(プロアクティブ)な対処で行いたいものです。何をしてあげたいかのリストを作り、これがあるからできない、と、できない理由を並べるのではなく、「どうやったらできるか」という対策を考えるのです。海外で暮らす人にとって、母国の親に会いに行く交通費は、幸せに暮らすための必要経費です。後々、親孝行できずに後悔すると、夫婦仲にも影響は出るし、何より、本人の精神状態が悪くなってしまうからです。

親といい関係でない人は、自分ができる範囲で親と歩み寄ることを考えてみましょう。会うと喧嘩になるなら、はがきやメールから始めて、簡単な近況報告をする。それから、誕生日や母の日や父の日にプレゼントを贈る、でも、向こうからは何も期待しない。そして、帰国するときは「いついつ帰るので、会いたいです」とメールか電話で言う。日本で会う場所も実家が気まずいなら外で会うこともできます。肝心なのは、「自分ができることはした」というところなのです。

プロアクティブな親孝行がなぜ大切かは、アメリカで育つ子供の立場からも言えることがあります。子供は親の態度を見て育ちます。外国から来た自分の親が、外国にいるその親にできる限りのことをするという態度を見せるのは、子供にとっても大切な「家族関係のレッスン」になります。そして、それは彼らにとって自分たちのルーツを知る機会にもなるのです。祖父母はこんな人だったという話や、親が小さい頃の話をするのは、核家族で暮らしている子供には大変貴重な体験です。

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