(※この記事は2010年から2014まで北米報知紙上で連載されていたコラムを再掲載したものです)
親を日本に置いての海外生活で辛いことの中に、年老いていく親に親孝行ができない、病気になったときに介護ができない、死に目に遭えない、などがあります。それができないのは、遠い海外に住んでいるから身軽に身動きができない、というのがもっとも大きな理由です。子供が高校や大学なのでお金がかかる、夫や子供を置いてひとりでは帰国できない、専業主婦なので稼いでいないのでそうそう日本には帰れない、仕事が忙しく休めない、グリーンカードの申請中で国外に出ることができない、元々親との関係はあまり良くない、きょうだいとの関係が悪い、など、ほかにも親孝行できない理由は様々です。
しかし、日本で親が亡くなり、その前後で十分なことができなかった人たちには、「ああしておけばよかった」「これを言っておきたかった」というような後悔が多いのも事実です。一番辛いのは、「しようと思えばできたのに、しなかったこと」です。そのために、がっくりきてしまったり、うつになってしまう人もいるのです。
海外で暮らす日本人は、親孝行をどう考え、どうすればいいのでしょうか。日本の親との問題でカウンセリングに来る人たちに、「何でもできるとしたら、何を親にしてあげたいですか?」と聞くと、「元気なうちにどこかに行ってあげたい」「好きなものを作って、肩でももんであげたい」「病院に一緒に連れて行ってあげたい」「看病してあげたい」などが出てきます。親といい関係を持てなかった人は、「死ぬ前にわかり合いたい」「普通の親子関係になりたい」と言います。
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