(※この記事は2010年から2014まで北米報知紙上で連載されていたコラムを再掲載したものです)
アメリカでの出産を予定している場合、ご家族がサポートに駆けつけられる方も多くいらっしゃるかと思いますが、中にはご家族にサポートを頼める状況になかったりという方もいらっしゃるかと思います。アメリカの病院で出産する場合は出産後1泊して退院することが多く、出産後どうなってしまうのだろうと不安に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
妊娠中に病院での乳児のケア、授乳についてなど、いくつかのクラスなどを受講したものの、私も病院に勤めていながら初めての出産を控えて不安を抱えていた一人です。
出産直後は女性が人生で一番、自分の身体を大切にしなければいけない時です。お母さんがゆっくり身体を休めることは赤ちゃんとの絆を作り、母乳を作るために必要なこと。赤ちゃんのお世話に必死になるあまり退院直後からあれこれ動き回り、自分の身体の心配は後回しになりがちですが、産後の無理は後になって様々な形で現れるようです。
インターネット、雑誌、本、友人など多くの情報が得られる時代ですが、お産婆さんや母から子どもへと伝承されてきたような、本当に必要な情報やサポートを得る機会は少なくなってきているのではないでしょうか?
皆さんは、ポストパータムドゥーラと呼ばれる、産後のお母さんの体の回復と赤ちゃんの成長を見守り指導や援助をするプロフェッショナルがいるのをご存知ですか? アメリカを含め、諸外国では出産前後の女性を支援する専門家「ドゥーラ」がひとつの職業として確立され、多くの方が活躍しています。
アメリカでは、妊産婦を支援する「出産ドゥーラ」と、産後女性を支援する「産後ドゥーラ」のふたつの役割が存在します。私も実際に産後ドゥーラさんにお世話になり、産後の回復や赤ちゃんのお世話、授乳についてなどサポートを頂きました。
今回はなでしこドゥーラ(*)さんに、ポストパータムドゥーラ(産後ドゥーラ)について教えて頂きたいと思います。
Q:ポストパータムドゥーラとは具体的に何をされるのでしょうか? 日本でいう助産師さん、もしくは家政婦さんとは違うのですよね?
A:はい、助産師さんのような医療行為はいたしません。また、家政婦さんとも違います。ポストパータム・ドゥーラとは、赤ちゃんを迎えたご家族が快適に新しい生活をスタートできるようにサポートするお仕事です。
産後と新生児に関する専門知識を持っていますので、異常があればすぐに医師やラクテーションコンサルタントへのコンタクトを提案します。サポートの内容は左記になりますが、それぞれのご家族のご希望を伺って対応させていただきます。
・母乳育児のサポート
・新生児のお世話
・産後のお母さんの心と身体の回復のお手伝い
・お食事の準備(必要に応じて買い物も含む)
・上のお子さんのお世話
・産後に関する情報の提供、提案
Q: どのような訓練を受けてポストパータムドゥーラになるのでしょうか?
A: DONA International主催のワークショップを受講して産後のお母さんの心と身体の変化、新生児の身体、母乳育児に関する勉強をし、その他に授乳指導とインファントCPRのクラスも別途受講が義務付けられています。
ワークショップでは様々なケースを想定してドゥーラとしてどう対処するかを徹底的に学び、トレーニングとして実際に産後のお母さんと赤ちゃんのお世話もします。
Q: どんな方にポストパータムドゥーラのサポートをおすすめしますか?
A: 日本では産後の床上げは出産から1カ月後、こちらでも一般的に産褥期(母体が妊娠前の状態に戻るまでの期間)は6週間といわれています。特に産後3週間は、家事をしたり、買い物に出たりせず、ゆっくりとベットに横になって身体を休めることで、お母さんの身体の回復だけでなく、赤ちゃんとの絆を深め、産後うつを防ぐ効果もあります。もちろん母乳を作るためにも横になることは必要です。
そんな大切な期間に近くに安心して身の回りのことが頼める人がいない方には、是非サポートをお勧めしたいと思います。また、母乳育児に不安を感じている方、上に子供さんがいて産後ゆっくり休めないと言う方にもお勧めします。
帝王切開で出産されることが決まっている方には特にお勧めしたいです。帝王切開で出産されても3日後には退院になりますから、お家に帰っても授乳するだけでも本当に大変です。
後編では、具体的にどのようなサポートをお母さんのみではなく、赤ちゃん、ご主人/パートナーに提供しているのか、どのようなメリットがあるのかなど、お話を伺います。
*参考資料:Pregnancy Childbirth and the Newborn 4th Edition by Penny Simkin
(為石 万里子)
【はあとのWA】
JSSN(Japanese Social Services Network)はボランティア団体で、日本人コミュニティーにサポートを提供する活動を続けています。シアトル、ベルビュー近郊の日本人、日系人のために医療、福祉、介護、法律などのサービスの情報提供を行っています。詳しくはjssnseattle@gmail.com、http://heartnowa.netまで。