(※この記事は2010年から2014まで北米報知紙上で連載されていたコラムを再掲載したものです)
歳を重ねていくと、成人期までは精神的に何も問題がなかった人でも色々な理由が積み重なりうつ病になりやすくなる場合があります。健康面では特に脳梗塞などの循環器系の病気により後遺症の有無に関わらず、病後に気分が著しく落ち込むことがあります。またその他の高血圧症、心臓病、糖尿病、関節痛などの慢性的疾患も高齢者にとって、日々その病気と共に生きていくということになりストレスがかかるものです。
こうした慢性的疾患症に伴い、また前述した脳梗塞の後遺症などによって、今までの社交範囲が著しく狭くなって、自然と孤立をうみ、車社会のアメリカでは特にその状況がより高齢者の精神衛生に影響してきます。何か病気になるとその治療のために、毎週のように医療機関へ治療やリハビリなど時間を費やすことになることも少なくありません。周りの家族や友人はその方が治療に率先して取り組んでいると思い安心している場合もあるかと思いますが、ご本人にしてみると毎日のように治療やリハビリに励んでも、若いときのように体力的に明らかな回復が感じられないなど、精神的に落ち込む理由は様々です。
こちらの高齢者でもよくあることなのですが、日本の文化的にも、年代的にも特にうつ病などの精神疾患に関しては、根強い偏見や情報不足があるといつも感じます。そして前述したように高齢者特有の様々な体調の変化や環境の変化により、気分が落ち込んしまい、ご本人がそのままにしておくことでうつ病になる可能性が高くなります。そういった方々には、その症状が重症になる前に念のため専門医に相談してみたほうが良いと思います。治療も早ければ早いほど、その回復もご本人のもともとの状況まで戻る可能性が高くなります。
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