第9回 役に立つ ドメスティックバイオレンス基礎知識 ② of はあとのWA

Heartnowa_logo_Fcolor.jpg


シアトル、ベルビュー近郊のシニアライフ、介護、医療、子供、教育、DV、心のケア、法律等

はあとのWA!JSSNが発信する福祉、医療情報

この記事は、北米報知新聞に掲載されました。

第9回 役に立つ ドメスティックバイオレンス基礎知識 ②

9月1日号のコラムでは、ドメスティックバイオレンス(以下DV)はあまり報告されていない犯罪だと説明しましたが、それは一体どうしてなのでしょうか? 前回で少し触れましたが、ここで、1995年にロサンゼルスで日系人と日本人移民を対象に行われたDVの意識調査の結果の一部を見てみましょう。

狭いコミュニティー、異国生活の不慣れ

  • ●調査に参加したロサンゼルス在住の日系人または日本人移民の女性211人の内61㌫が、何らかの形でDVを経験したことがあると報告
  • ●調査に参加した女性の71㌫が、日本的な物の考え方(がまん、男尊女卑、家族の福利、外に助けを求めない、争い事を避ける等)が、自分のDVの対応のしかたを決める要素になったと報告
  • ●アメリカ生まれの日系人と、日本から移民してきた女性を比べると、83㌫の日系人は友達にDVについて相談するが、移民の場合、43㌫となっている.
  • ●日本人移民の90㌫は、自分が受けているDVは大した事ではないと考えることが、暴力に耐えるのに役立ったと報告している(日系人の場合は58㌫)
  • 私の団体に相談を持ちかけられる日本人のDV被害者の方はほぼ全員日本で生まれ育ち、成人してからこちらに来られた移民の方々です。この意識調査にもあるように、日本人的な考え方で、長年がまんにがまんを重ね、DVの程度がひどくなるまで助けを求められない方が多いようです。明らかにことばや体の暴力を受けていても、「日本じゃこれが普通ですよね?」で片付けてしまう方もたくさんいます。
  • その他にも、日本人移民のDV被害者が助けを求められない理由としては、次のような例が挙げられます
  • ●シアトルの日本人コミュニティーは狭く、自分の状況が他の日本人に知られるのは恥ずかしいと感じる
  • ●シェルターなどに移ったとしても、子供が補習学校やバイリンガル学校に通っている場合、転校や休学は難しく、そこでパートナーと顔をあわせる可能性がある
  • ●アメリカでは、いつどのような状況で警察に通報すればよいのか分からない。また英語ができないので通報しても自分を理解してもらえないのではないかという不安がある
  • ●日本の法律制度と違い、こちらではDVが理由で離婚しても、ほとんどのケースでは加害者と子供の親権を分け合わなければならない。自分が子供といない時に何が起こるか分からないという心配がある
  • ●アメリカで仕事をした経験が無く、経済的な援助がなければ暮らしていけないと感じる
  • ●パートナーに「警察に通報したら、児童保護サービスに子供を連れて行かれるぞ」と脅された
  • ●パートナーが移民ビザのスポンサーなのだが、一向に手続きをする様子もなく、誰かにDVの事を話せば、不法滞在で国外追放になると言われた
  • ●もし離婚をして日本に帰ったとしても、年齢差別などで、再就職が難しい。まだ日本では離婚に対する悪いイメージがある。
  • これらはほんの一例で、個人の様々な条件が変われば、状況はもっと複雑になっていきます。それを考えると、「DVはつらいけど、別れてもっとひどい境遇になるよりはマシだ」と何も助けを求められないのもうなずけます。

知人のDV被害への対応

  • それでは、もしあなたの知っている人がDVの被害にあっているかも知れないと感じたらどのように対応すればいいのでしょうか? 被害者の国籍が何であっても、自分が愛する人から暴力を受けているという事実はとても恥ずかしく、自分のせいでDVは起きていると信じている人がたくさんいます。また、加害者がそのように暴力を被害者のせいにしているケースもあります。
  • 被害者とのコミュニケーションのとり方としては、おおまかに次の点に気をつけましょう。
  • ●プライベートな場所で会話をする。とても個人的な事情を打ち明けられるかもしれません。なるべく人目を気にせず、偶然知り合いが立ち入ったりしないような場所にしましょう。子供なども周りにいないほうがいいでしょう。
  • ●秘密を守る。あなたは加害者とも知り合いで、すぐにでも暴力行為を止めるようにと注意をしたくなるかもしれません。また他の共通の友人達からもサポートを受けられるようにと、仲のいい数人に事情を話したくなるかもしれません。個人の情報というのは、いったんあなたの手を離れてしまうと、誰がどの様にそれを使うかはコントロールできなくなってしまいます。善意でした事でも、後で被害者を傷つける羽目になるかもしれません。また、あなたが個人の情報を誰にも漏らさないと分かれば、被害者も安心して相談ができるでしょう。
  • ●被害者に何が必要かは、被害者が決める。いったん誰かがDVを受けていると知ってしまったら、どうにかしてその人を助けたくなるのは当たり前です。すぐにでも家を出たほうがいいとか、今から警察に通報しよう等、論理的に考えれば筋が通ったアドバイスでしょう。でも当の本人にしてみれば、それはもっと複雑な状況なのです。家を出てどこにいくのでしょうか? 子供の学校は? まだ別れる決心もついていないのに? その決断をした事によって、影響されるのは被害者の人生であって、あなたのではありません。被害者にとって何が一番助けになるのか尋ね、できる限りそれに従いましょう。
  • ●暴力を被害者のせいにしない。せっかく勇気を出して自分の事情を話したのに、返ってきた返事が「あなたが何か怒らせるようなことしたんじゃない?」や「そんなのよくあることだから、文句を言わずにもっとがんばれば?」では、被害者はそれ以上助けを求めようとはしないでしょう。前回も言いましたが、被害者は加害者の暴力をコントロールする事はできません。もちろん被害者にも配偶者や恋人として完璧では無いところがあるでしょう。でもそれは暴力を振るわれる正当な理由としては成り立ちません。
  • この手順で話を聞いても、相手は「DVは無いから心配しないで」と言うかもしれません。その場合は無理に情報を聞き出そうとするのではなく、「そう、私の思い違いでよかった。もしまた何か話したい事があったらいつでも言ってね」と会話を終えるのがいいでしょう。そうすれば、もしも実際に相手がDVを経験している場合、いざという時に相談をし易くなります。
  • そして、話を聞くだけではなく、DVに関する情報や安全対策の立て方などの助けが必要な場合は、無料で日本語で相談を受けられる団体に連絡しましょう。
  • Eastside Domestic Violence Program (ゆう子まで)
  • (425) 746-1940 または(800) 827-8840

プロフィール記事

三木優子 Yuko Miki

ワシントン大学で女性学を学ぶ。性差別や人種差別問題に興味を持ち、自らの移民としての経験を活かしながら人を助ける仕事に就くことを決意。現在イーストサイドにあるDV援助団体でアドボケート・カウンセラーとして働く。

yuko.jpg