第7回 親孝行の秘訣~海外在住者版~ of はあとのWA

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この記事は、北米報知新聞に掲載されました。

第7回 親孝行の秘訣~海外在住者版~

親を日本に置いての海外生活で辛いことの中に、年老いていく親に親孝行ができない、病気になったときに介護ができない、死に目に遭えない、などがあります。それができないのは、遠い海外に住んでいるから身軽に身動きができない、というのがもっとも大きな理由です。子供が高校や大学なのでお金がかかる、夫や子供を置いてひとりでは帰国できない、専業主婦なので稼いでいないのでそうそう日本には帰れない、仕事が忙しく休めない、グリーンカードの申請中で国外に出ることができない、元々親との関係はあまり良くない、きょうだいとの関係が悪い、など、ほかにも親孝行できない理由は様々です。

しかし、日本で親が亡くなり、その前後で十分なことができなかった人たちには、「ああしておけばよかった」「これを言っておきたかった」というような後悔が多いのも事実です。一番辛いのは、「しようと思えばできたのに、しなかったこと」です。そのために、がっくりきてしまったり、うつになってしまう人もいるのです。

 海外で暮らす日本人は、親孝行をどう考え、どうすればいいのでしょうか。日本の親との問題でカウンセリングに来る人たちに、「何でもできるとしたら、何を親にしてあげたいですか?」と聞くと、「元気なうちにどこかに行ってあげたい」「好きなものを作って、肩でももんであげたい」「病院に一緒に連れて行ってあげたい」「看病してあげたい」などが出てきます。親といい関係を持てなかった人は、「死ぬ前にわかり合いたい」「普通の親子関係になりたい」と言います。

受身ではなく能動に対処

  • 「何かあったら」という受身的(リアクティブ)な対処でなく、日本の親との関係は「何かが起こる前に」つまり能動的(プロアクティブ)な対処で行いたいものです。何をしてあげたいかのリストを作り、これがあるからできない、と、できない理由を並べるのではなく、「どうやったらできるか」という対策を考えるのです。海外で暮らす人にとって、母国の親に会いに行く交通費は、幸せに暮らすための必要経費です。後々、親孝行できずに後悔すると、夫婦仲にも影響は出るし、何より、本人の精神状態が悪くなってしまうからです。
  • 親といい関係でない人は、自分ができる範囲で親と歩み寄ることを考えてみましょう。会うと喧嘩になるなら、はがきやメールから始めて、簡単な近況報告をする。それから、誕生日や母の日や父の日にプレゼントを贈る、でも、向こうからは何も期待しない。そして、帰国するときは「いついつ帰るので、会いたいです」とメールか電話で言う。日本で会う場所も実家が気まずいなら外で会うこともできます。肝心なのは、「自分ができることはした」というところなのです。
  • プロアクティブな親孝行がなぜ大切かは、アメリカで育つ子供の立場からも言えることがあります。子供は親の態度を見て育ちます。外国から来た自分の親が、外国にいるその親にできる限りのことをするという態度を見せるのは、子供にとっても大切な「家族関係のレッスン」になります。そして、それは彼らにとって自分たちのルーツを知る機会にもなるのです。祖父母はこんな人だったという話や、親が小さい頃の話をするのは、核家族で暮らしている子供には大変貴重な体験です。

親孝行のあるべき姿

  • ここで気をつけてもらいたいのは、誰が日本に帰るのか、というところです。親がピンピンしていてみんなと会うのを楽しみにしている場合は家族連れで帰るのはいいことです。しかし、親が弱ってきて、大勢で来られると気を遣う、疲れる、という場合は、ひとりで帰国するのも賢明です。というのは、いくら親孝行したくて帰っても、アメリカ育ちの子供も連れて行くと「子供に日本文化を見せてやりたい」ということが優先になり、自分の親といい時間を過ごすというのは二の次になってしまうことが多いからです。同じく、アメリカ人の配偶者を連れて帰っても、ある程度はその人を日本で楽しませなければという思いがあるので同じことになります。年老いた親のために親孝行で帰国するなら、親が主人公であるべきです。
  • 最後に、親孝行は「親が望んだ通りのことを子供がすること」と考えている人が多いので、少しそれを考えてみましょう。もし、そうだとすると、海外生活に親が反対したか、良く思っていなかった場合、もうすでに親不孝をしてしまったことになり、「今さら、親孝行しても……」と思う人もいるでしょう。そうではなく、親孝行は「自分が、親にやってあげたいことをしてあげること」と考えてはどうでしょうか。親が望んだ通りのことができる子供はいないし、もし、できたとしても、本当に親がそれで100㌫幸福かは疑問です。「子供が一緒に温泉に行こうと連れて行ってくれた」「こんなにじっくり話し合ったのは初めてだね」「ナイアガラが見たいという夢を叶えてくれた」というサプライズだって、素晴らしい親孝行なのです。

筆者プロフィール

角谷紀誉子 Kiyoko Kakutani

ワシントン州認定ソーシャルワーカー。サクセス・アブロード・カウンセリング代表。勉強、仕事、または結婚でアメリカに住む日本人を助けることに使命を感じる。JSSNでは、同じ使命を持ったやる気にあふれた人たちと共に活動をすることが喜びで、自分自身の成長にもつながっている。代表。勉強、仕事、または結婚でアメリカに住む日本人を助けることに使命を感じる。

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